シニア世代が自宅の中で思わぬ怪我や事故を起してしまう場所やシチュエーションをご存じでしょうか?
日常的な動作でも、高齢の両親には気を抜くと転倒などにつながる動作かもしれません。

例えば、スリッパを履いて平らな廊下を歩いていたら転倒した。こんなことが起こりえます。何ともなかったのなら良いですが、骨折をして入院となると一大事です。そうならないように、高齢者が自宅で怪我や事故につながることや、その予防方法について聞きました。

教えてくれたのは、介護付有料老人ホーム「ソナーレ」で、入居者のリハビリテーションなどを行って日々の生活を支えている作業療法士の吉田さん。

吉田 圭 さん
作業療法士歴15年、北海道出身です。前職は乗馬のインストラクターをしていました。作業療法士の資格取得後、病院や老人保健施設の勤務を経て有料老人ホームに勤めています。趣味は登山、ワイン、コーヒーです。

段差だけじゃない! 意外な転倒場所

自宅内での思わぬ事故(アクシデント)として多いのが転倒です。高齢者になるほど、つまずいたり、滑ったりするだけでも、骨折や大けがをしてしまうことがありえます。転倒を予防するだけでも自宅の事故リスクはかなり減るので、どんな場所が転倒しやすいのかを把握しておくことが重要です。

パッと思いつくのは、階段や玄関などの段差だと思います。もちろん、これらの場所は日々気をつけている所だと思いますが、私たちが想像もできないような場所でも起こりえます。

例えば、 「床の素材が変わる場所」。「畳からフローリング」といった床の滑りやすさの変化などで、転んでしまうそうです。また、庭などの地面の傾斜も転倒の原因になりやすいとのこと。

また、意外なのがスリッパです。これは、スリッパが滑りやすいといった話ではなく、スリッパを履くことで床と段差ができてしまい、スリッパから足がずれたときにその段差で転んでしまうとのこと。

予防方法

床の素材に限らず、危険なところを通るのは何をするときか、なぜそこを通らなければいけないのか、などをまずは考えてみること。そして、通るとすればゆっくり歩く、何かつかまるものを配置する、などの予防を行うのが大切です。

一番大きな転倒の原因は機能低下です。転倒しにくい身体の機能を維持することが根本的な予防になります。筋力が落ちると、それを補うために歩き方全体のバランスや姿勢が変わり、同じ環境でも転倒しやすくなるので、後述する「生活リズムをつくる」ことの中に運動を取り入れてみてください。

高齢者が救急車で搬送される時間帯とその理由

高齢者は朝方に救急車で搬送されることが多いそうです。これはなぜかというと、寝起き直後に事故が多いから。寝起きは自分で思った通りに身体が動かないことがあると思います。そのため、転倒などのアクシデントが起こりやすいとのこと。

予防方法

まず朝方が一番あぶないと覚えておくこと自体が予防になります。具体的な予防方法は、寝起きの一歩目に身体を支えられる手すりなどを設置すること。

事故リスクはこんな場所にも

ほかにも事故に繋がりやすいのがお風呂です。お風呂は、滑りやすく、肌が露出しているので怪我も大きくなりやすい場所。怖いのは、湯船から立ち上がれなくなることがあること。湯船は立ち上がるのがけっこう大変です。高齢者でなくても、本当に疲れているときに力がでなくて湯船からなかなか立ち上がれない経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか?

また、のぼせてしまう、お風呂に入ることで血圧が変動し、浴槽から出たときにめまいがして倒れてしまう、というリスクもあります。

予防方法

湯船から立ち上がるときにつかまれるものを取りつけること。また、お風呂の時間が長いなと思ったら声をかけることも大切です。

根本的な予防は生活リズムをつくること

アクシデントが起きないようにするには、1日の生活リズムをつくることが大切です。おすすめは、朝に運動をして、夕食までは活動的に過ごし、夕食後は緩やかに身体を休息にむかわせていくようなリズム。

活性化は身体を動かすことでも、クロスワードのような頭を使うことでもどちらでも結構です。

注意点としては、お昼寝をする場合は短時間にすること。お昼寝をしすぎたり、生活リズムがバラバラで睡眠をきちんととれていなかったりすると、リスクは高くなります。

両親と同居している場合は、両親が日課にしていたことをやめたりしたときは要注意です。動かなくなるとケガをしやすくなるので、日課にしている散歩などを「めんどくさいから今日は行かない」という日が続いていたりした場合は気をつけてください。動かなくなると怪我をしやすくなるという直接的な要因だけでなく、認知症の初期症状などで活動性そのものが低下している可能性もあります。

まとめ

高齢者が自宅で注意しなければならない怪我や事故リスクと予防法を教えてもらいました。身体の衰えによる転倒などの事故は、本人も自覚症状がなく、突然訪れます。事故が起こってからの対策ではなく、事前に予防するためにもこれを機会に両親と話をしたり、家の中の事故リスクが高そうな場所を確認したりしてみてください。