ソナーレ駒沢公園の
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コラム

2024/03/21

髪結う、その手 ~しあわせでいてほしい~

皆様、こんにちは。ホーム長の三輪です。

先日、あるご入居者が退院されました。
この方の娘様は遠くアメリカにお住まいですが、退院後のお母様の生活を慮り、一時帰国されました。

短い滞在期間の中で娘様は、主治医やナーススタッフ、リハビリ専門スタッフ、ケアスタッフのもとをまわったり、役所などの公的機関に出向いたりして精力的に動かれ、退院後のお母様が困らないように最大限の努力を払われていました。

さらに娘様は、
「一番の懸念は、母は聴力が弱くなっているので、ホームのなかで人とのコミュニケーションに支障が生じてしまうこと。淋しい思いをしてほしくない」
と、話され、アメリカに戻る前に、お母様の耳鼻科受診と補聴器の修理や調整を済ませたいと希望されました。そこで当日はスタッフがお供し、各所へご案内することといたしました。

方々めぐったのち、「好物のお寿司が食べたい」とのご要望を受けて立寄ることに。
平日のお昼でしたが、そのお寿司屋さんは人気が高く、行列ができていました。
一緒に座って順番を待っている間、娘様が少し乱れたお母様の髪を整えてくださいました。

娘様は、
「今日の外出に備えて、スタッフさんが髪も爪も整えてくれたのね。感謝です」
「私が幼かったときのことだけれど、祖母が入院していてね。母は、いっつも祖母に付きっ切りだった。誰よりも早く起きて、家族の身支度や朝食の用意をして、誰よりも早く病院へ田舎道を通っていたのよ」
「当時、まだ小学校くらいだった私は、通学路の途中にあるその病院に寄って、そこで母に髪を結ってもらった。そのころ、いろいろ大変だったけれど、私を大切にしてくれていたのよね」
「まさか、こうして母の髪を整える日がくるとは思っていなかったけれど、わるくないものね…」
と、話してくださいました。

お寿司は大満足。
「お母さん、入院中は食べられなかったでしょう。ほんとにうれしそうね」
と娘様はおっしゃりながら、お母様の様々な好みについて、教えてくださいました。

娘様の出国が迫ったある日、
「湿っぽいことは、なしにするわね。でも、わたしは母に幸せでいてほしい。淋しい想いをしてほしくない。それだけなのよ」
「アメリカに居る孫は、また母とスキーに行きたいといっているわ。孫もそろそろ学業に一区切りつくから。そうしたら、日本に連れてくる。それまで、元気でしあわせでいてほしい」
そう言い残されて、アメリカへ発たれました。

娘様へ ―。
お母様が、笑顔で誕生日を迎えられました。
今日も新しい髪型に挑戦されていましたが、しあわせそうなご様子です。
また、ご報告させてください。