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ソナーレ駒沢公園の
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コラム

2024/09/01

感涙 ~気品の源泉~

こんにちは。ホーム長の三輪です。

今回は、先日大盛況であった三味線演奏会の様子をご紹介いたします。
ご用意していた座席はすべて埋まり、その中で三味線の涼やかな音色が響きます。
外は夏の巷。
とはいえ、ご入居者それぞれの脳裏には異なる情景が浮かんでいたのではないでしょうか。
イマジネーションを否応なく搔き立てる弦の響き。音が静寂を引き立たせます。
心が落ち着き、癒えていく。そんな時間でした。

長唄『勧進帳』、『浜辺の歌』、『祇園小唄』、『岸の柳』、『宵待草』…。
粋で、繊細。華やかであったり、わびさびが効いていたり。
私が最も驚いたことは、多くのご入居者が、長唄を歌われるということです。
目を閉じ、声を響かせ、時折指で節を刻みながら、それぞれに長唄を歌われていました。

私には、「ああ、共通言語なのだな」と感じられました。
同じ世代で、それぞれの境遇に違いはあれ、同じ時代の近い世界で、長唄は多くの皆様の身近にあって、愛されていたのかもしれません。文化に暗い私の憶測に過ぎませんが、それほどまでに皆様は、声をひとつにして歌われていました。

後日、先生から頂いたお便りの中に、「本日は貴重なお時間を拝借し、演奏させていただきまして誠にありがとうございました。ご入居者の皆さまはお歌がとてもお上手で、ついついたくさん歌っていただいて、疲れさせてしまったのではないかと心配しております」とありました。
しかし私には、ご入居者は体力の限り、感性の限りを尽くして、この演奏会を能動的にご一緒に創り上げられているように感じていました。

演奏会のあと、皆様が充実の面持ちでお部屋へ引きとられていく中、スタッフがあるご入居者に屈んでお話かけしている様子がございました。
気掛りで歩み寄ると、そのご入居者は涙を流していらっしゃいました。
「どうかなさいましたか」とお伺いすると、「三味線の音が、こんなにも素晴らしいとは…」と華奢な肩を震わせながら、感涙されていたのでした。

このご入居者は、いつも静かな気品を纏っていらっしゃる方で、先日退院されてこられたばかりでした。
多くの文化に触れられて、深い造詣を持たれています。
日々のご挨拶も、無駄のない美しい所作でなされ、相手方にきわめて良い印象を与える方です。
その気品の源泉をみたように感じました。
美しいものに触れて心震わせるお姿は、言葉を尽くして表現する以上に、強く私に伝わってきました。

三味線演奏会は多くの方のご支持を頂きましたので、ぜひまた先生にお越し願いたいと考えております。
蛇足になりますが、現代の共通言語は何でしょうか。
遠い未来で現代を振り返った時に、それは「やさしさ」や「よりそい」であってほしいと思います。
互いを大切にしあい、護り合う時代が、2020年代に確かにあったこと、そうであってほしいと思うのです。