2025/02/01
ようこそ、ソナーレ美術室へ ~一人ひとり、一つひとつ~
こんにちは。ホーム長の三輪です。
当ホーム1階の、廊下の奥にある小部屋。
ここはもともと『趣味の部屋』としていましたが、この度、創作活動に打ち込んでいただく美術室として、また様々な企画展などの開催の場として、多目的にご活用いただけるよう模様替えをいたしました。
清々しい朝日が差し込むこの部屋で、過日、記念すべき一回目の展覧会が執り行われました。
今回はその模様をご紹介いたします。
ご覧ください!この素晴らしい作品の数々を。
ご夫婦で入居されているお二人は、共に創作活動をライフワークとされていました。
ご主人は書を、奥様は皮革工芸を。
それぞれの作品は丹念に創られ、多くの人々の眼に触れ、受賞もされてきました。
世に出された作品のほかにも、お手元にたくさんの作品を保管されていらっしゃいます。
そのいくつかをPA(パーソナルアシスタント:ご入居者個別担当スタッフ)がお借りし、誇らし気に私に見せてくれました。
「これは…」と、思わず息をのんだ私。
その高い意匠性や、訴えかけてくるような強いメッセージ性に、度肝を抜かれたのでした。
いずれも芸術に対する熱い情熱がほとばしっているようです。
「これはぜひ、ご入居者やご家族、そのほかホームに携わる人々にも、この感動を味わっていただきたい」
そうした想いから、お二人の作品展覧会の企画が持ち上がりました。
PAの強い後押しもあって私たちの想いが届き、ご夫婦は二日間にわたる展覧会の開催をご承諾くださったのでした。
そこで、PAと有志のスタッフで、展示準備を始めました。
どの作品も、本物志向の極み。万が一のことがあってはいけません。
大切に、かつ慎重に展示していきました。
ご入居者もスタッフも、全員参画で、展覧会成功のために一丸となる姿。
もはや老人ホームの一室での催しというよりは、本格的なギャラリーでの企画展、といった感じでした。
珠玉の名品が会場いっぱいに展示されました。
『美』の世界。そこに佇み、開場を待つご夫婦。
あとでうかがったのですが、様々な場を経験されてこられたお二人でありながら、この時は「誰にも響かなかったらどうしようか…」というご不安をお持ちだったとのこと。
しかし、いざ展覧会が始まると、ご夫婦の不安は全くの杞憂であったことを痛切に感じることとなりました。
開場と同時に多くのお客様が押し寄せ、会場は大盛況。
ご入居者をはじめご家族、ご来館者、往診医が、ワクワクと期待に胸を膨らませながらご来場くださったのでした。
そして、その誰もが、私と同じように息をのまれていました。
まさか、自分と同じ屋根の下で暮らす人が、これほどの創作を手掛けるアーティストだと、誰が予期したでしょうか。
感嘆と嘆息が方々から聞こえ、朝の静謐なお部屋は、賑わいの場へと変貌していました。
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作品のすばらしさは筆舌に尽くし難いものですが、とにかく観る人を惹き付ける強烈な魅力と刺激にあふれていました。
美や芸術の前にあっては、あまりに無粋な感慨かも知れず、はばかられる気持ちはありますが、私はこの作品一つひとつがヒトとヒトとを繋げるような、心からの感動を覚えました。
交流の場こそあれ、お互いのすべて、来歴や信条を知り得ないヒトの世界。
そこにあって、作品は何より雄弁に、ご夫婦の人物を語っています。
作品を知ることは、作者を知ること。作品の魅力は、作者の魅力。
二人のアーティストは、来客全員に丁寧に接していらっしゃいました。
一つひとつの作品を、そこに込められた想いを、お一人おひとりに響くようにお話になっているさまにもまた、心打たれました。
閉会後。
ご夫婦は、関わったすべての人、一人ひとりに感謝の意を告げていらっしゃいました。
こんなにも心のこもった感謝の言葉を、私は頂戴したことはありません。
無二の感動を、かかわった全員に与えてくださった二人のアーティストに、心からの敬意を表します。
今後の企画もぜひ、ご期待くださいませ。