2024/07/11
『着物に夢中』 ~着付けで取り戻した本来の表情(かお)~
皆様、こんにちは。ライフマネージャー兼ナースチーフの松木です。
梅雨空が続く毎日ですが、お障りなくお過ごしでしょうか?
当ホームを運営するライフケアデザインでは、社内の定期イベントとして各ホームの“Life Focus”の取り組みを発表する事例発表会を開催しております。
今年3月に開催された『第3回Life Focus事例発表会』にて、当ホームは見事『最優秀賞』を受賞いたしました!
そこで今回のブログでは、本事例の概要をご紹介いたします。
少し長くなりますが、どうかじっくりとお付き合いください。
タイトルは『着物に夢中』です。
ご紹介するのは90代のご入居者、S様。
東京の下町育ちで、生活の場はいつも音楽が流れる、にぎやかな環境でした。
趣味は、歌うことと着物の着付け。
長年、美容師に従事され、着付けでは講師として海外に教えに行かれるほど活躍されていました。
仕事がら、メイクは毎日欠かさず、身だしなみにも気を使うおしゃれな方です。
しかし、ご主人を亡くされてからは人と行動をともにされる機会が極端に減少し、「諦めます」と漏らすこともしばしば。
そのようなS様に、以前のような活気を取り戻し、ご本人らしい生活を送っていただきたいとして、私たちの"Life Focus"(LF)の取り組みが始まりました。
S様にとってのおしゃれとは、美しく着物を着こなすこと。
担当PA(パーソナルアシスタント:ご入居者個別担当スタッフ)がS様と出会った当初は、表情が硬く、言葉数も少なかったため、なかなか立ち入ったお話を伺うことができませんでした。
普段は、ベッドで横になる時間が長く、お食事も進まないことがあるS様。
PAは毎日の関わりの中で、お気持ちの理解に努めたり、幾度となく話しかけたりして、心の距離を縮めていきました。
また、ご本人がお好きな歌やお花を一緒に楽しみながら、心打ち解ける機会の創出に努め、少しずつ笑顔を引き出していきました。
こうして根気よく寄り添ううちに、「また着物の着付けがしたい」「お正月は着物姿で大好きな歌を歌って楽しみたい」とのご要望をお持ちであることがわかりました。
そこで、ご自身で『再び着物の着付けができるようになる』ことを目標に掲げ、S様に着付けの手順や感覚を取り戻していただけるよう、働きかけていくこととしました。
毎月1回のLF活動の日には、S様の着付けの練習をサポートしました。
また、ケアスタッフだけでなくナースや作業療法士、ケアマネジャーなどの多職種が連携し、着付けに必要な体力や筋力をつけるためのリハビリの実践を支援しました。
上の写真は、作業療法士と帯締めに必要な筋力をつけるためのリハビリに励んでいらっしゃる様子です。
真剣な眼差しでお着物を選ぶS様。眼識の高さは、今も健在です。
着付けが始まると、見違えるように表情が生き生きとされてきました。
元S様のPAであり、今も絶対的な信頼が寄せられているケアマネジャーの参画も、LFの実現に向けた大きな後押しとなりました。
彼女は、S様のお言葉を引き出すのがとても上手なため、ほかのスタッフも手法をまねることで、上手くコミュニケーションが取れるようになりました。
そしてついに、S様の念願だった“着物姿”でのお茶会が実現する日が来ました!
お茶会では、ペンライトを手にライブ観賞も堪能されたS様!
大好きな曲が流れると、感極まったご様子でした。
そして歌唱では、スタッフが驚くほどの声量をご披露くださいました。
着付けの練習にご協力いただいたご入居者のA様と一緒に記念撮影。
お着物を身にまとったS様の、凛として美しい佇まいに、周囲の皆様から羨望の眼差しが向けられていました。
お茶会終了後、S様から「ありがとう」とのひと言をいただけたとき、スタッフは感激のあまり泣きそうになりました!
約10か月の長い期間をかけ、PAが中心となって取り組んできたLFが実現した、感動の瞬間でもありました。
ご家族からも弾んだお声で「普段、面会に行っても全く笑わない人が、こんなに笑うようになって、驚きでした」、「最近は表情も明るくなったねと、家族で話しているんですよ」などと、スタッフのモチベーションが上がる、ありがたいお言葉もいただきました。
私たちはこれからも、ご入居者の『想い』に寄り添いながら、"Life Focus"の取り組みをとおして、その方らしい生活の実現に努めてまいりたいと思っています。
どうぞご期待ください。
なお、本編にご登場いただいたA様(下の写真、向かって左の方)の“Life Focus”の取り組みをご紹介する『着物に夢中』スピンオフ編 ~着物のある暮らし~ も掲載しております。
ぜひ、そちらもご覧ください!